2015.8.27訂正加筆版
ヘイト・スピーチ
在特会ら・徳島県教組威力業務妨害事件
控訴審・高松高裁
第1回口頭弁論期日(8/31)のご案内
報道関係 各位
徳島県教組威力業務妨害事件弁護団
(連絡先 あわ共同法律事務所 TEL 088-652-8030)
来る2015.8.31(月)13:20より、高松高等裁判所民事第4部にて、徳島県教組威力業務妨害事件の控訴審・第一回期日が開かれます。裁判所も、本件に対する高い社会的関心に注目して、傍聴抽選実施事件としての取扱いとしたところですが、その概要についてご報告いたします。 (リンク:裁判所案内)
本件の本質は、差別をなくしたいという善意の思いで、四国朝鮮学校支援に献身的な努力をしてきた徳島県教組が、在特会らの人種差別ヘイト・スピーチ街宣による攻撃を受け、甚大な損害を被ったというところにあります。県教組及び同書記長は、事実上、「在日朝鮮人や朝鮮学校に関われば、こんな目に遭う」といった類の見せしめとなり、インターネットや日本社会に蔓延する人種差別思想を背景にした攻撃標的に据えられました。同書記長は事件当時の激烈な恐怖の影響に加え、その後も、差別意識に基づく攻撃の不安に苦しみ、事件から5年以上経過した今でもPTSDの症状に苦しみ続けています。 (リンク:事件の概要)
報道機関のみなさんは、職業がら、同種のヘイト差別攻撃に晒されることの影響を、最も敏感に感じ取っておられるのではないでしょうか。差別扇動者たちは、マイノリティのみならず、マイノリティを支援する市民やジャーナリストをも攻撃の標的とし、こうした人々を孤立させ、善意の公益活動や表現活動を後退させることに成功しています。
このため、人種差別撤廃を願い、社会の理不尽さに声を上げ、行動を起こそうとする全ての市民にとって、本件に対する裁判所の審理は極めて重要な意味を持っています。人種差別性を見据えない司法判断がまかりとおり、不当な差別攻撃を受けても裁判所による適正な法の保護が期待できないとなれば、差別扇動者たちはますます増長し、攻撃を拡散させていくことでしょう。そして、日本社会のありとあらゆる場面において、勇気と善意に基づく意思表明が萎縮していく作用をもたらすのです。
このような重要な社会的役割を担っていたにも関わらず、本件の原審・徳島地裁は、在特会ら差別扇動者の「表現行為」かのような体裁に惑わされ、あろうことか人種差別攻撃であるという本件の本質を見落とした判決としてしまいました。
この間のヘイトスピーチ事案に関する裁判として、京都朝鮮第一初級学校威力業務妨害事件(以下「京都事件」という)があり、1226万円もの高額賠償を命じた判決(H26.12.8最高裁決定にて確定)が社会的な注目と支持を集めています。徳島事件でも、人種差別撤廃条約が問題対象とする目的・効果を明らかに呈しているのはもちろんのこと、京都事件に①近接する時期(京都朝鮮学校に対する三回目の街宣からわずか二週間後)において、②同一人物(中心的役割を果たした人物が共通)による、③同一の犯行態様(業務妨害を伴う大音量街宣と動画配信)及び④同種の差別扇動表現の連呼まで伴うものです。これをあくまで徳島県教組に対する批判などと位置づけ、「朝鮮人に対する差別を直接的に扇動・助長する」内容はなく「人種差別的思想が発現したとはいえない」などとする徳島地裁判決の評価は、日本社会の良識に逆行する特異な判断で、控訴審において是正される必要があります。
本年3月に言い渡された徳島地裁判決の後、5月に徳島市・あわぎんホールにて、先日8/22(土)には高松・香川社会福祉総合センターにて原告・支援集会が開催されました。(リンク:8/22集会の様子)それぞれ約70人、約100人もの参加者が集まり、本件に対する一般市民のみなさんの問題意識を改めて実感しているところです。法律家の動きとしても、徳島事件の審理状況を知った京都事件保護者らや弁護団を中心とする呼びかけに応じて数十名の弁護士が新たに原告弁護団に加入しており、現時点で総勢45名の大弁護団が構成されました。さらに、学問の分野からも、国際人権法学や社会学の観点から、日本全国から各分野の第一人者による専門意見書作成にご協力いただき、既に裁判所に提出しております。裁判所がこれら専門家の意見をどのように取り扱うのか、市民がしっかり監視して見届ける必要があります。
ここ数年来、急速に差別意識が蔓延するなか、私たちは、日本社会の将来を決定づけかねない重要な局面にあり、正義の実現と人権保障を担う司法の果たすべき役割にはこれまでになく大きいものがあります。報道機関各位におかれましても、本件の重要な社会的意義に照らし、取材・記事掲載等をご検討いただけましたら幸甚です。