徳島県教組襲撃事件判決 原告組合・声明 2016.4.25
私たちは,この6年間,徳島県教組襲撃事件を引き起こした被告らに対し,刑事裁判と民事裁判を続けてきました。それは,在特会をはじめとする被告らの差別扇動行為を許すことができなかったからです。
本日,高松高裁による控訴審判決がでました。私たちの完全勝訴です。裁判所は,被告らの行為が人種差別であるとしました。一審判決では明確にされなかった差別性を認めました。「募金詐欺」をでっち上げ,朝鮮学校を支援した私たちを攻撃し続けてきた事件です。判決によって,私たちをはじめ日教組への「募金詐欺」との汚名が返上され,名誉が回復したことを喜び合いたいです。これで安心して朝鮮学校への支援ができます。民族教育にも関わっていくことができます。日本に生きる朝鮮人が差別と排除の迫害を受けることなく,共に生きていくことのできる社会が実現する第一歩となります。
さらに判決では,一審判決では欠落していた原告元書記長が女性であることで受けた名誉を回復することに言及していることも評価します。女性であるからこそ被った被害は,本件に限らず多くの事件の背景に潜んでいます。本件判決によって,女性差別に切り込むことができました。
また,本判決は,原告被害者の受けたヘイトクライムを,重大な精神侵害と受けとめ,PTSD症状を認定しました。裁判所は,救済すべきは何かということをしっかりと見据えた判断を示しました。自らの発言に対する責任を免れない社会を実現する展望となります。このことこそが,憲法の規定する表現の自由を保障することだと考えます。
私たちは,司法の場でしか被告らの不当性,犯罪性を糾弾することができません。人種差別を目的とした示威活動が差別的効果を醸成するものと裁判所が認定したことの意義は大きいです。本判決も京都朝鮮学校襲撃事件判決同様,歴史的意義のある判決となりました。これらの判決が判例として日本社会に根づき,朝鮮学校の民族教育が今後も豊かに保障され,共生の教育が発展することを願ってやみません。
この6年間,私たちの裁判に対して,共に闘って下さった弁護士の皆さん,そして,暑い日も凍えるような寒い日も,雨風が吹き荒れる日でさえも裁判所に駆けつけてくださった皆さん,そして,法廷には来ることが出来ないけれども日本各地で祈るように見守ってくださった皆さん,皆さんの差別を許さぬ熱いまなざしが,この判決を引き出して下さいました。皆さんのこれまでのご支援,本当にありがとうございました。
2016年4月25日
徳島県教職員組合
徳島県教職員組合襲撃事件 原告弁護団声明 2016.4.25
本判決は、平成22年4月14日から始まった徳島県教職員組合(以下「徳島県教組」という。)と元書記長に対する事実無根の「募金詐欺」等という誹謗中傷を明確に名誉毀損であると判断したもの(判決文22頁、第1審原告書記長が『募金詐欺』を働いたなどと事実無根のことを言い立てて、その名誉を毀損したと認定)で、徳島県教組らの名誉回復を司法が認めたという大きな意義があるものである。
さらに、本判決は1審判決(徳島地裁判決)が、1審被告らの行為について、人種差別的思想が発現したとはいえないなどと誤った判断をしたことについては破棄したうえで、人種差別行為であると明確に認めた。判決文26頁では、1審被告らが差別の対象とする在日朝鮮人らを支援する者は第1審被告らから攻撃を受け、様々な被害を蒙るということを広く一般に知らしめ、その支援活動に萎縮効果をもたらすことを目的としたものと認めることができると判断し、1審被告らの行為が悪質かつ重大なものであるとして人種差別目的を明確に認定した。県教組らが「募金詐欺した」との主張も攻撃する口実としたに過ぎず、その真の目的は朝鮮学校を支援した団体・人物を攻撃することにあったことを認めたものである。徳島大学樋口直人准教授が指摘する「転倒した因果関係」であることを裁判所が認めたものである。本判決が、日本人である元書記長に対する行為について、民族差別・人種差別であると認定したことは、本件事案を正当に評価したといえる。
また、1審判決で消滅時効を理由に賠償責任が認められなかった1審被告に対する請求を認めた点も、1審判決の誤りを是正したもので正当である。
京都朝鮮学校襲撃事件で人種差別を許さない司法判断が示されているところ、本判決はその司法判断の流れを受け継いだものであり、人種差別行為を許さない判断が司法の場で定着したと高く評価したい。
われわれは、今後も人種差別が行われない社会を実現できるよう、取り組んでいく決意である。
以 上
(文中のリンクは、冨増が適当につけました。
破棄された地裁の判決文も、公開されているところが見つかれば、
またリンクつけておきます。)