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  • 囜連CERD委員質疑ず政府答匁を読んで

ヘむト「クラむム」研究の空癜が蚱した日本政府のごたかし

曎新日2022幎2月21日


1 はじめに

囜連人皮差別撀廃委員䌚による察日審査が、䞡日、スむス・ゞュネヌブで行われた。前田朗先生のブログで詳现な速報をしおいただいおいる。 私が匁護団事務局を担圓した朝鮮孊校の事件に぀いお、各委員の質問・コメントず日本政府答匁を読んだ。するず、囜連のナ゚ン委員の質問では、事案の前提が敎理しきれおいないがために、戞惑いながら質問しおいる様子がみおずれた。この事案が「スピヌチ」に留たる行為䞋蚘の類型2などではなく、珟行法違反の犯眪「クラむム」。䞋蚘の類型1に至っおいた事案であるずいう、客芳的な前提がぐら぀いたたたの質問になっおいたのである。 そしお、この隙間にうたく぀けこたれ、日本政府答匁では、朝鮮孊校の事件が問いかけおきた問題に向き合うこずはなかった。具䜓的には、

・珟行犯逮捕もせずに街宣を行うに任せた察応    譊察の「共犯的な寛容さ」ずいう䞭村䞀成氏の指摘をご参照いただきたい ・告蚎から起蚎たで9ヶ月もの時間を芁した䞍圓性、 ・差別性を無芖した刑事事件の審理、 ・執行猶予ずいう軜い量刑が再犯及びヘむト街宣の蔓延を蚱したこず

など、ごたかされお逃げられおしたったずいう印象である。

日本で暪行しおいるヘむトスピヌチはれっきずした暎力であるずいった囜連委員のコメントが泚目されおいる。しかし、各委員がコメントするにあたっお念頭に眮いおいた兞型事案が、日本法䞊でもヘむト「クラむム」に達する嚁力業務劚害や暎行行為に該圓する行為であったならば、「暎力」で蚱されないず結論づけられるのは圓たり前のこずである。わざわざ囜連の条玄の゚キスパヌトにコメントさせるたでもない、単玔な垰結であった、ずいうこずになっおしたう。

2 「ヘむト・スピヌチ」の2類型

昚今の日本のメディア等で「ヘむト・スピヌチ」ず䞀括りにされがちな䞀連のヘむト街宣であるが、これには 

■類型日本の珟行法䞊、既に犯眪行為「クラむム」ずなるような

      嚁力業務劚害名誉毀損等に至る行為。 

■類型日本の珟行法䞊は、犯眪に該圓せず捜査・凊眰の察象ずならない行為

の2皮類がある。朝鮮孊校の事件は、類型のヘむト「クラむム」である。民事の刀決のほうが倧きく報道されたが、民事の地裁刀決以前に圌らの行為は、既に捜査・起蚎を経お有眪刀決が確定しおいるのだ。

今回の囜連の審査をはじめずしお、ヘむト抑制に察する日本政府の察応の甘さを指摘する堎面においおは、類型か類型かで、远及の仕方が党く異なっおくる。぀たり、類型2の「スピヌチ」行為を念頭に眮くのであれば、珟行法で十分なのか、䞍十分であれば立法すべきではないか、それから犯眪凊眰は無理でもその他の政府斜策は党お尜くされおいるのか、ず問えばよいしかし、類型の「クラむム」であれば、これは珟行刑法違反の犯眪行為に察する捜査や凊眰のあり方の問題である。日本政府内の捜査機関譊察・怜察及び叞法機関裁刀所においお、迅速に公平に、厳しく捜査・凊眰が行われおいるか、日本瀟䌚の差別意識に圱響され政府察応の甘さをもたらしおいないか、ず問いかけなければならない。

䞀芧衚にしおみたした。

 京郜朝鮮孊校事件では䞍十分であった政府察応

京郜の朝鮮孊校事件における政府捜査機関・叞法機関の察応は党くもっお䞍十分なものであった。しかし、今回の囜連審査では、類型ずの敎理に混乱があったがために、この远及が極めお甘くなっおいる。

鈍かった捜査察応に朜む差別性

詳しくいうず、本件における譊察、怜察の察応はずおも鈍く、逮捕たでヶ月を芁するなど、䞍圓に長い期間を芁しおいた告蚎の時点で、ネット動画で、犯眪行為に該圓する確たる蚌拠も揃っおいるこずも考えるず異様に遅い察応であった。その間、児童や父母ずいった被害者の䞍安は継続しおいた。ヘむトピラミッド䞊局に䜍眮する暎力行為であったにも関わらず攟任されおしたったのである。かねおより、日本の譊察組織は、囜家暩力や倧䌁業に察する正圓な衚珟行為に察しおは過剰ずもいえる介入をしおきた。それなのに、ひずたび被害者が、圚日コリアンずいうマむノリティや瀟䌚的匱者ずなるず、悪質な嚁力業務劚害行為を珟認しながら、積極的な指導も珟行犯逮捕もしなかった。人皮差別撀廃条玄䞊も芋過ごせない、れっきずした差別ずいうべきである。 こうした差別は、か぀お「ヘむト・スピヌチ」「ヘむト・クラむム」なんお蚀葉が党く知られおいなかった時代に、既にチマチョゎリ切り裂き事件などで露呈しおいた、捜査機関の察応における䞍圓な差別ず連続性を有するものだ。「スピヌチ」䞀緒くた論では、こうした連続性もがかしおしたうこずに留意しなくおはならない。

量刑の軜さの䞍圓性 無反省な被告人に察する執行猶予刀決

朝鮮孊校事件の刑事裁刀では、有眪ずなったこずは圓然の垰結である。他方で、顕著な特城ずしお泚目すべきは、その量刑の軜さである。本件の刑事の法廷においおは、民族差別の悪質性が審理の䞻題ずなるこずはなく、被告人らは人皮差別行為に察しおは党く無反省であるこずを法廷で堂々ず認めおいた。かかる審理経過がありながら執行猶予が付されたもので、この量刑の軜さのために、人皮差別抑止の効果は限定されたものになった。被告人らは、やり方が悪かっただけで本質は政治的蚀論ではある、などず䞻匵するなど、差別意識、偏芋、先入芳の類に぀いおは、法廷の堎においおさえも謝眪されるこずはなく、䜕ら是正されなかった。 被告人らがこうした姿勢を瀺すのは自由であるが、問題はこれに察する裁刀所の評䟡だ。裁刀所は、本件の悪質性の本質が、人皮差別・民族差別メッセヌゞにあるこずに向きあわず、単に、手段ずしおやりすぎであったかのような評䟡をした。差別に察しお毅然ず察峙する日本瀟䌚の姿勢を瀺すこずはできなかったのである。かかる姿勢は、人皮差別撀廃条玄の趣旚に真っ向から反するはずのものである。その埌、法廷においお無反省さを貫いた被告人らがこずごずく同皮ヘむト再犯を犯し、新たな犯眪被害者ずヘむト被害に傷぀くマむノリティを䜜出したこずは、偶然ではないはずだ。こうした事態を蚱したのは量刑の䞍圓な軜さであり、これに぀いおの政府責任の所圚ず、その埌の瀟䌚に䞎えた圱響ずいうものは、囜連においお厳しく審査されるべき由々しき問題であったはずである。

囜連審査における日本政府答匁

それにも関わらず、日本政府の答匁は、単に   倧䜿--

平成幎月の京郜朝鮮孊校事件の刑事凊眰に関しおは、被告人名に぀いお、嚁力業務劚害眪、䟮蟱眪等で起蚎がなされ、京郜地裁で有眪刀決が出お、確定した。ヘむト・スピヌチに関いお、日本刑法では、名誉毀損眪、䟮蟱眪、嚁力業務劚害眪、脅迫眪、匷芁眪などが成立しうるので、捜査圓局は刑事事件ずしお取り䞊げるべきものがあれば法に基づいお適正に凊理しおいる。

ずいうもので、あたかも䜕も問題なく、適正に察応されたかのようにしれっずした説明でごたかし、それで終わっおいる

 ヘむト「クラむム」研究の空癜

私は今回の远及の甘さを生んだのは、日本におけるヘむト・クラむム研究の空癜であるず感じおいる぀たり、珟行法違反の行為が人皮差別的動機に基づいお行われた堎合、日本の刑事叞法がどのように察応すべきか、この点に぀いおの研究が空癜になっおいるのだそしお、その原因は、日本においお「スピヌチ」抂念ず「クラむム」抂念がごっちゃになっお議論されおいるこずにある、ずにらんでいる 昚幎末から、垫岡康子さんの新曞「ヘむトスピヌチずは䜕か」を䞭心に、いく぀かの文献を読んだ。これを受け、私から日本の研究者の皆さんにお願いしおきたこずがある。ヘむト・「クラむム」に぀いお定矩を再確認しお、議論を敎理しおほしい、ず。 ヘむト「スピヌチ」芏制法の新蚭が必芁なほど甚倧な損害が生じる、ず論じるずきに、その理由付けずしお、ヘむト「クラむム」類型の被害調査を匕甚されるこずが倚い。京郜第䞀初玚孊校の事件や、奈良の氎平瀟事件、ロヌト事件など、スピヌチ芏制論者が挙げる代衚的な事䟋は、読者の関心を匕き぀け、問題意識を匷めるには効果的な事䟋であろう。 しかし、その倚くは「クラむム」の領域に至っおいるこれらの「クラむム」事䟋に䟝拠しお「このような悪質な事䟋を合法のたた攟眮できない、だから新しい法埋が必芁」ずいった流れで問題提起するのはミスリヌディングずいうべきである。ヘむト「クラむム」に぀いおは、「スピヌチ」芏制法の新蚭ずは関係なく、珟行法の運甚の匷化により犁圧しおいく䜙地が残されおいるからだ。「クラむム」類型に぀いおは、珟行法を適甚しお有眪刀決により凊眰されおいるし、民事的に損害賠償呜什もだされおいる。日本の法埋は量刑や、慰謝料、無圢損害の認定においお広い裁量を裁刀官に認めおいる。人皮差別の悪質性は、珟行法䞋の刑事法廷や民事の賠償の審理においお重芁な考慮芁玠ず䜍眮づけるこずができるはずである。こうした運甚の定着を暡玢しおいくこずは、実務的には「スピヌチ」芏制新法の議論ず同じくらい倧切なこずである。参考 京倧・曜我郚教授のtwitterたずめ  孊者や垂民のみなさんには、その他の「クラむム」ではない行為類型ずはきちんず区別しお、珟行法を掻甚した察策を論じおほしいず思う。被害者がマむノリティであっおも、捜査機関は日本の被害者ず同様に、もしくは人皮差別の悪質性に照らしお、公平に、迅速に、行為の悪質性に即した厳しい量刑が確保されおいるか、ず問いかけおほしい。「クラむム」に議論を絞るからこそ、より適したレシピが導ける堎面もある。諞倖囜には充実した研究成果があるにも関わらず、日本に玹介される際には「スピヌチ」類型ずの区別・敎理が䞍十分なたた玹介されおいる。ピンがけのたた「ヘむトは悪質だ」ずいった抜象的な教蚓しか埗おいないようでは、効果的なヘむト抑制策に぀なげられない。 もちろん、「スピヌチ」被害の本質に迫るために、「クラむム」事䟋から考察を深めるアプロヌチは極めお有益である。しかし、議論が混乱しかねないので、「スピヌチ」の議論で「クラむム」の調査結果の匕甚を行う際には、その郜床、説明を加えおいくこずが真摯な説埗のあり方であるように思う。

この点、安西教授の論文頁・6行目以降では、ヘむト「クラむム」法に぀いおは「スピヌチの芏制ではなく」、議論の察象ずすべきは「ある犯眪行為があったずきにそれに察する適切なレベルの凊眰の問題」ず䜍眮づけられおいる。的確な敎理ずいえよう。このように、諞倖囜では、ひずたび「クラむム」の領域に入っおくるず、衚珟の自由のために芏制できない、なんお議論は原則ずしおない。凊眰そのものをやめおおこう、なんお発想は䞀切ない点に留意すべきである。 この点、䞀口にヘむトスピヌチずいっおも、最も悪質な「クラむム」類型から、「お行儀のよいヘむトスピヌチ」、さらには、うっかりやっおしたったような過倱類型「うっかりヘむトスピヌチ」たであり、衚珟者の意図、悪意、圱響床の皋床にかかわらず、様々な態様のものを含む。日本における最近のヘむトスピヌチをテヌマずする倚くの曞籍・文献では、これらをなんでもかんでも幅広く「ヘむトスピヌチ」類型ずしお倧括りにしお、そのなかのものが䞀緒くたに論じられおいる珟状があるように思う。この議論のおおざっぱさが、今回の日本政府答匁のごたかしを蚱しおしたっおいるずいえるかもしれない。

 立法論だけでは解決しない 

芏制法の運甚の問題があるこずに目を向けるべき

クラむムずスピヌチを䞀緒くたに論じるこずによる匊害ずしお、もう䞀぀気になる点がある。「クラむム」に察する法埋の適甚・運甚の問題ずいう、本来あるべき問題提起が萜ちおしたいがちなこずである。法埋があっおも、これが取締りに積極的に利甚されなければ絵に描いた逅にすぎない。 ヘむト「クラむム」街宣者たちが「衚珟の自由」の隠れ蓑、政治的蚀論であるずの「衚面䞊の装い」をたずうだけで、譊察の動きが途端に鈍くなっおしたう珟状を改善しおいくために、定矩の敎理の問題は避けお通れないヘむト「クラむム」には匷いメッセヌゞ性があり、こうした「クラむム」に察しお迅速な取締りが遂行されず攟眮されるような事態になれば、ヘむトのメッセヌゞ性に圱響を受けお「スピヌチ」被害もたた広がるこずになる。ヘむト暎力ピラミッドの裟野を広げ、さらなる「クラむム」被害拡倧をも、もたらす。珟行法䞊「クラむム」に至らないヘむト「スピヌチ」がやりたい攟題ずなるのはもちろん問題であるが、「クラむム」が瀟䌚的に黙認されるこずの圱響も甚倧なのである。 こちらの文章にたずめおいたすので、よろしければご参照ください。 匁護団の䞀員ずしおの掻動を通しお、日本の珟行法の限界を感じた堎面は倚くあった。他方で、こず「クラむム」類型においおは、珟行法をより効果的に甚いる䜙地がある、ずいうこずに気付かされた。珟行法のポテンシャルを最倧限に発揮させるために必芁なこず。それは、珟圚は空癜ずなっおいるヘむト「クラむム」研究の進展である。

そしお、珟圚のヘむト「クラむム」に察しお法の適甚・執行に支障をもたらしおいる芁因や政治力孊のようなものを芋定めおおくこずは、「スピヌチ」芏制新蚭を議論する際にも有益なはずだ。今は攟任されおいるスピヌチ類型に぀いおも、将来的な立法によっお「クラむム」化されたずきに、果たしお譊察は動くのか。動くずしお、どの方向に向かっお動いおいくのか。譊察組織ずいうものは倚数掟や暩力者の意向を匷く反映する。子どもを狙った京郜事件をはじめ、珟行法においおも極めお悪質な「クラむム」類型に察しおさえ、なぜか動きが鈍い譊察の䜓質があるずすれば、そこから埗られる瀺唆や教蚓ずは䜕か。新法の圓初の理念どおりに法埋が運甚される保蚌はなく、暩力に察する譊戒心を忘れおはならない、ずいうのが私の意芋である。

ヘむトスピヌチの芏制法が実珟するずしおも、それは䜕幎もの議論を経た埌のこずずなり、「衚珟の自由」論者ずの意芋亀換のなかでその適甚察象も厳しく限定されおいくこずは必至である。それたでの間、もしくは、制定埌も、珟行法のポテンシャルを最倧限に掻かしきっお、ヘむト被害ぞの抑止効果を確保する必芁がある。 ずいうこずで、今回の囜連CERD委員䌚の議論を芋お改めお、ヘむトクラむム類型に぀いお議論の敎理が求められるこずを実感した。そこで、乱文のたたでも急いでこの文章をアップするこずにした次第である。

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すべお衚瀺

ヘむトスピヌチの定矩に぀いお もう䞀床考えよう。

※ 2024.5.16 改蚂履歎  ①質問の番号をマンガ冊子「あなたず私ずヘむトスピヌチず」巻末p.26のQ+Aペヌゞに察応させたした。②Q4の質問分に䞋線郚を加筆 はじめにこの冊子でをたずめるにあたっお、倧切にしようずした芖点、基本的な考え方などがあれば、たず最初にそれを教えお䞋さい。 私たちは、この冊子を䜜るにあたり、垂民のみなさんが、日々の生掻のなかで、個人ずしおヘむト・スピ

© 2015 by Shiki Tomimasu, Attorney-at-law, Kyoto

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